カンバセーション…盗聴…

1974年製作のアメリカ映画。フランシス・フォード・コッポラ監督・製作・脚本作品。ジーン・ハックマン主演。殺人計画に巻き込まれた盗聴のエキスパートの心理的恐怖を描いた作品。サスペンス映画の傑作として高く評価されている。

サンフランシスコ在住の盗聴のプロフェッショナル、ハリー・コール。通信傍受の権威としての輝かしい名声とは裏腹に、彼の私生活は孤独そのものだった。それは他者の秘密を盗み聞きするという盗聴という仕事を生業にしていながら、ハリーが自らのプライバシーの保持に異常に気を使っているからだった。そのためにハリーは、彼とより親密な交際を求める恋人とも別れる羽目になってしまう。そんな彼にとって唯一の心の支えは、厳重に外部から隔離された自室で、ジャズの調べに合わせてサクソフォンを演奏することだった。
ハリーはある日、大企業の取締役からの依頼を受けて、雑踏にまみれたユニオンスクエアで密会する若い男女二人組の会話を盗聴する。一見すると他愛の無い世間話に見えた二人の会話だが、そこに不審なものを感じたハリーは依頼人の補佐役に対し、録音したテープの受け渡しを拒否する。依頼人のオフィスからの帰り道にハリーは、公園で盗聴したカップルに遭遇する。例の二人組は、実はその会社に勤めていた社員であり、女の方は依頼人の妻だったのだ。
仕事場で何度もテープを聞き返すうちに、ハリーは男の「もしかしたら彼に殺されるかもしれない」という会話を拾い上げる。昔自分が盗聴したテープにより殺人事件を引き起こしてしまったという負い目があるハリーは、カップルの安全のためにテープを守ることを決意する。しかし、通信傍受の専門家たちが集まるカンファレンスの後、恋人と別れて傷心気味だったハリーは、彼の孤独に付け込んで来た女情報員によってテープを奪われてしまう。
テープを取り戻すために依頼人のオフィスを再訪するハリーが見たものは、テープを聞いて妻の不貞を知り激怒する取締役の姿だった。ハリーはカップルの会話に出てきたホテルに向かい、二人が泊まった部屋の隣にチェックインする。隣室の様子を盗聴するハリーだが、結局惨劇は防げず、バルコニーに出た際に殺人の目撃者となってしまう。
事件が起こってしばらく経った後、隣室を調査するハリー。一見何事も無かったかのように整えられた部屋だが、トイレから大量の血液が溢れかえってきたのを見て彼は動転する。ハリーはすぐさまホテルを飛び出して依頼人の会社にまで駆けつけるが、警備員によって取り押さえられてしまう。
その後ハリーは、依頼人の取締役が自動車事故で亡くなったという新聞記事を読んで会社に引き返す。そこで見たものは、マスコミに夫の死について取材されている女と、その傍らに付き添う男の姿だった。取締役に殺されることを恐れていたかのように聞こえた二人の会話は、逆に取締役を殺害する段取りについて話し合っていたものだった。ホテルの部屋で殺害されたのは二人組ではなく、実は取締役の方であり、ハリーの存在もまた彼らの計画の歯車に過ぎなかったのだ。
失意に打ちのめされて自室に戻ったハリーに対し、補佐役から電話が掛かってくる。「これ以上事件に深入りするな」という警告と共に、補佐役はハリーのサクソフォン演奏を録音したテープを彼に聞かせる。自分が盗聴されているという強迫観念に囚われたハリーは、自室を徹底的に調べ上げ盗聴器を発見しようとする。そのために彼は篤く敬っている聖母マリアの像さえ破壊するが、何も見つからない。荒れ果てた部屋でハリーは孤独と絶望の中、サクソフォンを演奏するのだった。

おすすめ映画情報

メインキャスト

ジーン・ハックマン:ハリー・コール
ジョン・カザール:スタン
アレン・ガーフィールド:ウィリアム・P・モラン
フレデリック・フォレスト:マーク
シンディ・ウィリアムズ:アン
マイケル・ヒギンズ:ポール
エリザベス・マックレイ:メレディス
テリー・ガー:エイミィ・フレデリックス
ハリソン・フォード:マーティン・ステット

評価

『カンバセーション…盗聴…』は、その興行的失敗にも関わらず、多くの批評家たちから優れたサスペンス映画だとして賞賛された。公開当時、タイムやニューズウィーク、ニューヨーク・タイムズといった権威あるマスコミが本作品について好意的なレビューを掲載した。特にバラエティ誌の批評家は本作品のことを、「現時点におけるコッポラのもっとも完璧で、もっとも自信に満ち溢れ、もっとも価値の有る映画」であると絶賛した[10]。それらの好意的な評価の反面、ジョン・サイモンのようにこの映画を批判する者も居た。辛口な批評家として知られるサイモンは、エスクァイア誌に掲載したレビューで、作中で盗聴のエキスパートとして描写されている主人公が、何度も見え透いた罠に嵌るという本作品の筋書きを、不自然でありそうもないことだと指摘した[11]。
本作品はコッポラの他の監督作品である『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』ほど一般的な知名度は高くないものの、現在では多くのコッポラ研究家や映画評論家たちから、彼のキャリアを代表する傑作だとして高く評価されている。ジョエル・シュマッカー[12]やゴア・ヴァービンスキー[13]といった映画監督たちも、好きな映画作品のリストにこの作品を含めている。
ピーター・コーウィーは、その著書『Coppola』のなかで、「コッポラの製作した作品の中で、この作品ほど熱情が込められた作品は無い」と評価した。コーウィーはまた、映画のラストシーンで自室に仕掛けられた盗聴器を発見するために部屋中を徹底的に破壊したハリーが、おそらくその中に盗聴器が仕掛けられていると疑いながらもサクソフォンだけを破壊しなかったのは、彼がその楽器の醸しだす音楽に夢と希望、罪の許しを求めていたからであると述べた[14]。
ロジャー・エバートはシカゴ・サンタイムズに掲載したレビューで、本作品のことを「簡潔にまとまった知的なスリラー」であると賞賛した。作品のモチーフについてエバートは、主人公ハリー・コールの、「基本的に悪人ではなく、自らの仕事を遂行しようとしているが、その仕事に起因する罪悪感と悪評に苛まされる」姿は、ウォーターゲート事件やベトナム戦争が齎した後遺症に苦しむ当時のアメリカ合衆国の縮図であると指摘している[15]。
1995年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。

ミニシアター最新情報